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岡山地方裁判所 昭和27年(行)15号 判決

原告 黒田義夫 外二名

被告 久米村選挙管理委員会

一、主  文

原告高鳥、同勝浦両名の請求は之を棄却する。

被告が岡山県久米郡久米村村長解職請求署名簿の署名中別表第三人名簿記載の者の署名を有効とした決定は之を取消す。

原告黒田の其の余の請求は之を棄却する。

訴訟費用は原告等三名の連帯負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は、被告が岡山県久米郡久米村村長解職請求署名簿の署名につき別表第一人名簿記載の者の署名を有効とした決定は之を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。この判決を求め、其の請求の原因として、原告黒田は昭和二十六年三月三十日の選挙に於て当選した久米村村長であり、原告高鳥、同勝浦の両名は何れも久米村村民であり選挙人名簿に登載されている有権者であり村政に利害関係を有する者であるが、久米村、大東村、大井西村三村合併問題に端を発して久米村内に政治的紛争が発生しその結果一部の村民は村長を解職することに意見の一致を見、訴外山口喜一外六十七名が村長解職請求代表者となり被告に村長解職請求書を提出し、請求代表者証明書の交付を申請したところ、昭和二十七年八月八日右証明書が交付されたので請求代表者は同村の有権者に対し村長解職請求署名簿に署名し印を押すことを求め、同村の有権者総数千二百名中五百十五名の署名を得、同年九月十日右署名簿を被告に提出し、各署名簿の署名者が同村の選挙人名簿に登載されている者であることの証明を求めたところ、被告は同月二十七日右署名総数の中、四百九十四名の署名を有効、二十一名の署名を無効と決定し同月二十九日から翌十月五日まで右署名簿を縦覧に供した。

しこうして、同日原告黒田は右署名簿の署名中植田ちず外百六十三名の署名につき被告に異議を申し立てたところ被告は僅か十名の署名者に当つて調査したのみで同月十四日、右署名中四百九十名の署名を有効とし、二十五名の署名を無効と修正決定した。然し乍ら右五百十五名の署名中別表第一人名簿記載の百六十一名の署名は同表下欄記載の理由によつて無効であるので、被告が昭和二十七年十月十四日久米村村長解職請求署名簿中前記百六十一名の署名を有効とした決定は違法であるから之が取消を求めるものであると述べ、別表第二人名簿記載の各証人及び証人山口喜一の各証言、岡山県久米郡久米村長解職請求署名簿第一号中、番号二二、二五、一〇九、一三三、一七五、二〇五、二〇六、二〇七、二〇九、二一〇の各欄の検証の結果を援用し、乙第一、二号証が夫々岡山県久米郡久米村長解職請求署名簿、岡山県久米郡久米村長解職請求署名審査録であることは認めると述べた。

被告訴訟代理人は原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。との判決を求め、原告高鳥、同勝浦両名に対する答弁として右原告両名が何れも久米村住民であり選挙人名簿に登載されている有権者であることは認めるが、右両名は本件村長解職請求署名簿に署名している者でもなく、又右署名簿の署名につき被告に対して異議申立をしている者でもなく地方自治法第七十四条の二第四項の関係人に該当しないものであるから本訴の正当なる当事者たる適格を欠き従つて右原告両名の本訴請求は棄却を免れないと述べ、原告黒田に対する答弁として、原告主張事実中原告黒田がその主張の日に当選した久米村村長であること、原告主張の如き久米村内の政治的紛争に端を発し、訴外山口喜一外六十七名の者が久米村村長解職請求代表者となり、原告主張の如き経緯を経て、同村長解職請求の署名を収集し、之が効力に対して被告のなした決定に対し、原告黒田より適法な異議の申立があり、被告が之に対し有効署名四百九十、無効署名二十五と修正決定したこと、及び久米村の有権者総数が千二百名であることは何れも認めるが、其の余の事実は凡て否認する。殊に右異議申立に対して決定をなすに際しては十分なる調査をなし、なお、山崎岱順、国米豊の各署名は二つ宛あつたが、何れもその一つを削除したものであり、原告が本件において無効と主張する署名を被告においてすべて有効と決定したことには何等違法な点はない。と述べた(立証省略)。

三、理  由

原告高鳥、同勝浦両名の本訴請求について按ずるに、右原告両名が何れも久米村住民であり、選挙人名簿に登載されている有権者であることは当事者間争ない事実であるが、地方自治法第八十一条により普通地方公共団体の長の解職請求に準用される同法第七十四条の二第八項により、同条第五項の規定による選挙管理委員会の決定に不服ありとして出訴し得る者とは、単に右決定に対して不服あるのみにては足らず、同条第四項に謂う所の関係人にして右決定を不服とする者(必ずしも当初の異議の申立人に限らない)でなければならないと解すべきところ、同条項に謂う関係人とは署名者、署名者以外で自己の名を代筆されているその本人請求代表者、請求代表者の委任を受けた者、被解職請求者等署名の効力の決定に関して直接利害関係を有する者であると解すべきであるから、右当事者間争なき事実のみをもつてしては右原告両名が本訴の正当なる当事者たる適格を有するものとは看做し難くよつて右両名の本訴請求は失当として棄却を免れない。

次に、原告黒田の本訴請求について考えてみる。原告黒田が昭和二十六年三月三十日の選挙に於て当選した久米郡久米村村長であること、久米村、大東村、大井西村三村合併問題に端を発して久米村内に政治的紛争が発生し、その結果一部村民が村長を解職することに意見の一致を見、訴外山口喜一外六十七名が村長解職請求代表者となり被告に村長解職請求書を提出し、請求代表者証明書の交付を申請し、昭和二十七年八月八日右証明書が交付されたので請求代表者は同村の有権者に対し村長解職請求署名簿に署名押印することを求め同村の有権者総数千二百名中五百十五名の署名を得、同年九月十日右署名簿を被告に提出し、その署名者が同村の選挙人名簿に登載された者であることの証明を求めたところ、被告が同月二十七日右署名総数の中四百九十四名の署名を有効、二十一名の署名を無効と決定し、同月二十九日から翌十月五日まで右署名簿を縦覧に供したこと、同日、原告黒田は右署名簿の署名中植田ちず外百六十三名の署名につき被告に対し異議申立をなし、同月十四日被告が右署名中四百九十名の署名を有効とし二十五名の署名を無効と修正決定したことは当事者間に争いがない。而して証人植田勇、同石井末子、同石井ちゑ子、同真名子鹿蔵、同真名子定子、同福島高市、同甲本剛、同大田美代子、同大田秀隆、同山本光義、同山崎岱順、同国米豊、同石井トナ、同石井かつ、同大田長四郎、同大田とし子の各証言によれば植田勇、石井末子、石井ちゑ子、真名子鹿蔵、真名子定子、福島高市甲本剛、大田美代子、大田秀隆、山本光義、山崎岱順、国米豊、石井トナ、石井かつ、大田長四郎、大田とし子の各署名及び押印は夫々自らなされたものではあるが、村長解職請求の趣旨を了知した上でこれに同意する意思をもつてなされたものでないことが認められる。されば右各署名は村長解職請求署名簿の署名としてはその効力なきものすなわち無効の署名と謂わなければならない。次に証人植田ちずの証言によれば植田ちずの署名及び押印は村長解職請求の趣旨に同意する意思をもつて自らなされたものではあるが、甲本治なる者が右署名を収集したことが認められる、而して解職請求署名簿の署名の収集は直接、請求代表者が行うか、署名収集の委任を受けた者が行うかの方法によるべきで他の第三者による署名収集は許されないものと解すべきところ甲本治なる者が請求代表者乃至は署名収集受任者であると認めるに足る証拠無く、されば右署名も亦無効のものと解する外はない。更に証人飛山由子、同井上光代、同井上益野、同佐々木芳賢、同石井頼市、同岸川きしの各証言によれば飛山由子、井上光代、井上益野、佐々木芳賢、石井頼市、岸川きし、の各署名は何れも自署でないことが認められる。而して直接請求における署名は文理(自治法第七十四条の二第一項)および事の性質上当然自署でなければならないものと解するので右各署名も亦何れも無効のものと謂うべきである。然し乍ら原告主張の百六十一名の署名中右二十三名の署名を除く其の余の署名を無効とする原告主張事実は之を認めるに足る証拠がない。以上のとおりであるから久米村村長解職請求署名簿の署名につき原告黒田の申立てた異議に対し被告が右植田勇外二十二名(別表第三人名簿記載分)の署名を有効とした決定は違法であつて取消さるべきものであり、従つて原告黒田の本訴請求中右二十三名の署名に対して被告のなした決定の取消を求める部分は正当として之を認容すべきであるが、爾余の百三十八名の署名に対する決定の取消を求める部分は失当として棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十二条、第九十三条を適用し主文のように判決する。

(裁判官 三関幸太郎 辻川利正 中原恒雄)

(別表省略)

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